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5.42024
着ぐるみの視界
着ぐるみの視界とは、着用者(アクター)が着ぐるみの中から外部を覗き見るために設置された「窓」を指します。
着ぐるみの視認性・視界範囲は、この窓の配置・大きさ・距離によって左右されます。
視界の素材
着ぐるみ本体の表面を覆う生地は、主にボア素材やポリエステル素材で、これらの生地に透過機能はありません。
そのため、視界専用に別の素材を用いて、外部空間を見るための隙間を作る必要があります。
着ぐるみの視界の主な素材は、次の種類があります。
ビニールクロス+メッシュ生地
厚手の透明ビニールシート(PVC・ポリ塩化ビニール)に、色付きのメッシュ生地を重ねた視界です。
細かいメッシュ1枚(色付け)、透明ビニールシート(空気漏れ防止機能)、内側の粗いメッシュ1枚(透け防止機能)の3層構造です。
主に、平面的な部位に使用します。
塩化ビニル板+スモーク(メッシュ生地)
スモーク機能のある塩化ビニル樹脂を真空成形機で曲面加工した視界です。
立体的な目を制作する際には「真空型成機」という器具を使用します。材料のプラスチック板等に熱を加えた後に型に押し当てて真空状態にすることで、簡単に元型通りの薄い成形品が作成できます。
塩化ビニル板は透過性があるため、視界にすることができます。
スモークが表面にコーティングされた状態では、黒く艷やかに見えてしまうため、黒以外の色への変更や艶消しをしたい場合は、上からメッシュ生地を被せて使用します。
視界の配置
着ぐるみの視界は、元のキャラクターデザインに上手く馴染むことが重要です。
また、着ぐるみの視界は多いほど役に立ちます。
正面だけでなく、死角になりやすい下方向にも視界を設けることで、小さなお子さんが近くに来た時に気配に気づくことができます。
見た目に違和感の無い範囲で、複数の視界を使えるようにします。
正面の視界と対角方向(背面など)に視界を設けると、着ぐるみ内部に光が入り込みます。
観客に視界の中を覗き込まれた際に、後ろから差し込む光によって、着用者の存在が見えやすくなってしまいます。
そのため、視界は着ぐるみの前面に設けるようにしています。
目や口など、周囲から独立した形・色の部位の場合、違和感のない視界として設定することができます。
周囲の色と視界が同一色の場合、隣り合った生地と類似色のメッシュ生地を使用して、可能な限り調和した印象で作り込みます。
ただし、材質が異なる点で多少の違和感は生じます。
ビニール素材や塩ビ板は、上にメッシュを被せたとしても、やや光沢感が残ります。
また、視界用の窓として機能させるためには透過性が必要ですが、その透過性によって着ぐるみ内部の空間の暗さが表面に現れてしまいます。
特に明るい色のキャラクターの場合は、差がわかりやすい傾向にあります。
着用者の目線正面に位置する額や、下方向を見る顎や股下など、元のキャラクターデザインには何もない場所に視界を設置する場合は、図面設計段階で必要の有無を確認をしながら進めます。
視界の大きさ
キャラクターデザインの目や口が大きく、視界用の部位が単色の場合、独立した視界として設定することができ、視認性の良い着ぐるみになります。
目や口の部位が、着用者の目線の高さよりも下に位置する場合は、図面設計時に額に追加の視界を設けるか、着用者が少し屈んで覗き込んだり、設定よりも身長の低い方が着用するなど納品後に工夫していただくことになります。
額部分などに独立したデザイン、例えば大きなマークなどが存在する場合は、正面方向を見ることのできる着ぐるみとして製作可能です。
目や口が小さく、付属デザインの少ないシンプルなキャラクターの場合は、視界設定や可視範囲の少ない着ぐるみになります。
それを補おうと、単色の広い額に視界を追加すると、やや目立ってしまいます。
目立つことを前提として追加の視界を設けるか、着ぐるみの着用技術と経験のある着用者に操演を任せるか、図面設計段階でご検討いただくことになります。
視界の距離
着用者の目に近い視界は見やすく、遠いと見づらくなります。
目線の高さに視界があっても、距離が遠すぎると、可視空間が狭く感じます。
特に全身が球体形のキャラクターや、頭の大きなキャラクターは、着用者の立つ位置と着ぐるみの視界の距離が離れやすい傾向にあります。
逆に視界が小さい着ぐるみであっても、着用者との距離が近ければ、覗き込んで外を見ることができます。
着ぐるみの視界として機能する代表的な部位
目
単色の目の場合は、その形のまま視界にすることができます。
複雑なデザインや複色の目は、瞳部分などの部位を視界にします。
口
開いている単色の口は、その形のまま視界にすることができます。
口の中に舌がある場合は、舌以外の場所を視界にします。
閉じた口の場合は、ある程度太く設計しても問題がなければ視界にできます。
デザインによって要相談の部位
額
おでこに独立したロゴなどがあったり、色の切り替えや段差がある場合は、自然な形で視界を設けることができます。
デザイン上何もない場合は、ご相談の上、スリット状の視界を追加することも可能です。
顎
首元にくびれのあるキャラクターは、顎の形になじませたスリット状の視界を設けることができます。
ただし、おなかが飛び出していたり、スカーフなどの追加アイテムがある場合は、下方向が見えにくいこともあります。
首元にくびれのないキャラクターは、顎の視界を設けないことが多いです。
股下
胴体と足の接触部に対して、なじませる形で視界を設けることが出来ます。
キャラクターの足の構造によってはつけられないこともあります。
鼻
デザインの要素が少ないキャラクターの場合、鼻を視界にすることもあります。
ただし、鼻が大きすぎる場合は、破損のリスクが生じるため、視界にはできません。
また、鼻が小さすぎる場合も、視界窓を作るための面積を確保できないため、視界にはできません。
弊社では、それぞれの着ぐるみキャラクターに合った仕様を考えながら、一体一体を制作しています。
視界設計に関してご不明な点がございましたらご相談ください。